関節の可動性はなぜ増えたり減ったりするのか?
この疑問を解決するのはそもそも関節とは何か?どの様な構造をしているのか?を理解しなければいけません。
「膝に水が溜まって病院で抜いてきたら楽になった」とか「膝にヒアルロン酸の注射をしてもらったら痛みが軽減した」って話を聞いたことがありませんか?
これらの事も関節のメカニズムを知ればなるほど!と理解できます。
関節とは?
関節とは骨と骨のつなぎ目にある部分です。
膝や肘、手首、足首など外から見てわかる部分もあれば奥まっていたり構造が複雑で外からでは分かりにくい部分もあります。また関節の数は260ヵ所以上あると言われています(個人差があります)
骨と骨は非常に硬い組織なのでお互いが直接触れ合うとすり減ってしまいます。なので正常な関節部分の表面は「軟骨」で覆われているのです。
軟骨には血管や神経が通っていません。そして軟骨は多くの水分を含み関節に掛かる衝撃や摩擦を吸収しています。
殆どの関節は関節包と言う袋の様なもので覆われていて中には滑液(関節液)と言う潤滑油の様なもので満たされています。この滑液が関節の中に存在する「水」の正体で状況により増減します。
増えすぎた滑液は関節包を内側から過剰に膨らませる為に関節の周辺組織を刺激し痛みを知覚します。なので病院では水を抜いて減圧する事により一時的な鎮痛の効果を出すのです。(膝の軟骨(半月板)には若干の血行があるので血液が溜まってしまう事もあり血を抜く場合もあります)
またこの滑液の主成分は皆さんが良く聞く「ヒアルロン酸」であり滑液(関節液)が減少している場合、ヒアルロン酸を注射する事で痛みが軽減するのはこの為なのです。
関節の動きの種類
関節はその目的によって多様な動きをします。
①屈曲②伸展③内旋④外旋⑤内転⑥外転⑦回内⑧回外このほかにも滑るような遊びの動きもあります
これらの動きには医学的に正常可動範囲と言うものが定められていています。バレエなど身体を柔らかく使う場合はこの正常可動範囲を超えた動きをしていますが身体を支える筋肉を鍛えているために間違った身体の使い方や元々持っている構造のトラブルが無ければ痛みは出ないのです。
子供と大人、青年、中年、老人では関節の数や構造が変わります
バレエなど大きく開脚したりする動きは大人になってから獲得しようと思ってもなかなか出来ません。それは子供の関節と大人の関節では条件が少し違うからなのです。
子供の関節はその構成する組織(軟骨、関節包、靭帯等)そのものの柔らかさに加え骨自体も柔らかいのです。また、関節と骨の間に軟骨結合と呼ばれる遊びあるのである程度の負荷はそれらが吸収してしまいます。
バレエや新体操などは幼年期にこの様な組織を柔らかくする訓練をします。その事により構造的に過度な動きをしていてもそれに対応できる骨格やそれをサポートする軟部組織、特別な動かし方を認識する力などが合わさった上で徹底的な反復練習を繰り返す事で怪我に繋がりにくい身体をつくっているのです。生活習慣の徹底した管理と練習を怠らなければ大人になっても正常可動範囲を超えた動きが可能になっているのです。
大人になってからバレエの様な動が出来るようになれますか?との質問を受ける事があるのですが、素質があって怪我のリスクを承知の上で取り組むのであれば可能です。ですが遊び半分でやるならお勧めはしません。ここでいう素質とは元々のその人の関節に関わる組織の柔軟性などを含む構造の事です。
実は私自身は50才代で開脚チャレンジを成功させていますがちょっとした不注意から内転筋を肉離れさせてしまいました。(この時は水分不足が原因でした)
なので本当の意味で柔軟性に富んでいて均整な身体を手に入れるには幼年期からの取り組みが必要になります。大人になってから猫背を直そうと思っていてもそれなりに努力が必要になります。(大人になってからでも時間を掛けて努力を続けて頂ければ改善します)
関節の可動域を増やす事は何才からでも可能です
関節の可動域を増やすには関節が正常に可動し、関節の動きを抑制している筋肉の筋膜をリリースし、関節包そのものの柔軟性を出せば可能なのです。
しかし前述のように怪我のリスクがあるので誰にでもはお勧めしません。
あくまでも正常の可動範囲を手に入れるのが健康の秘訣でありそれを超える可動は痛みの原因にもなるからです。
反復して関節に対して緩める動きを強いれば構造上緩んでいくのですが緩みすぎてしまった場合それを補うにはそれなりの筋力が必要になるからです。バレリーナが大人になっても痛みを誘発せずに踊れるのは関節の緩さを補う為に日々インナーマッスルを鍛えるトレーニングを欠かしていないからと推測しています。
出産も関節の可動性を亢進させます
分娩(お産)は可動性を亢進させる事が多いです
出産では骨産道と呼ばれる骨盤の部分が大きく動きます。骨盤のどこが動くかと言うとそれは仙腸関節と言う仙骨と面している部分で解剖学的には「不動関節」と定義されている部分です。不動関節と言う名称のせいでこの関節は動かないと誤解・誤認されている医療関係者が多数いますがお産においては確実に動きます。
この仙腸関節が大きく動くにはリラキシンと言うホルモンが関与していて本来強固に結合している仙腸関節の靭帯が一時的に柔らかくなります。ここからは30年の経験則からの私見ですがこの仙腸関節の柔軟性が生活習慣などの影響を受け左右均等に開かないケースがありこれが難産や産後の骨盤痛を引き起こしていると私共は解釈しています。
産前・産後の骨盤痛は関節の可動性亢進もしくはアンバランスが原因?
殆どの産前・産後痛は骨産道に加わるアンバランスな力と考えているので骨盤を取り囲む靭帯のバランス調整と股関節に関連する関節包と靭帯(筋肉)を調整する事で驚くほど速く改善します
目立った例では産後1か月車いすで生活していた経産婦が一回の施術で歩けるようになったり産後腰回りが痛く座ることも寝る事も出来ない経産婦が施術直後に普通の生活が出来るようになるのはこの様な部分の施術を行うからです(このケースは産院と連携している私共の実績で他院では同様の施術は不可能と考えています)
ちなみに当院ではお産当日までの施術と産後6時間での施術が可能でそれぞれの実績があります。
多くのアンバランスの場合どこかに関節の可動域減少が生じていてその部分を緩める事で改善を図れるのですが逆に緩みすぎてしまった場合(可動性亢進)もあります。
この場合は一般的な手技療法では却って可動性を亢進させすぎてしまうので注意が必要です。施術後に全く効果を感じない場合は可動性亢進を見逃されている可能性があります。
まとめ①
つまり可動性亢進は①意図的に関節に対して緩むような反復の運動を繰り返したり②可動性が減少した関節の代償作用だったり③お産などの要因で起こると考えています。
また④必要が無いのに骨を鳴らす為だけの施術を反復して受けると亢進してしまうケースもあります。
関節の可動性減少はなぜおきるのか?
関節は運動器なので使わなければ劣化します。また肩関節のように関節の位置が姿勢により大きく動いてしまう関節や股関節の様な多軸関節は同じ関節でも使わない方向のみ動きが減少してしまいます。 (前屈は得意でも開脚が全く出来ない人などはこれに該当します)
毎日同じ姿勢や同じ動きばかりしていると使っていない関節は知らず知らずのうちに可動性を減少させてしまうのです。
同じ理由で骨折の治療などで関節が動かないように固定してしまうと数週間で関節の可動域が激減する事も知られています。関節は適宜必要な分だけ動かさないと劣化してしまう器官なのです。
また、老化も可動性を減少させる大きな要因で多くの老人が同じ姿勢をしているのは大体似たような関節の可動域減少を行っているからです。
しかし人間の凄いところでは酷い猫背でも元気に(元気そうに)仕事やスポーツを楽しんでいる方もいます。それは何故かと言うと先程申し上げたように関節にはそもそも痛覚が無いので変形しても痛みを全く感じないことがある。それと動かなくなった関節を他の関節がサポートするからです。
まとめ②
簡単に言うと関節は動かさなければ可動性は低下します。また、動かし過ぎれば可動性が亢進します。
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